令和8年度 長野県公立高校入試(後期選抜)5教科の問題傾向と今後の対策をプロが徹底分析!
令和8年度の長野県公立高校入試(後期選抜)が終了しました。受験生の皆さん、そしてサポートされてきたご家族の皆様、まずは本当にお疲れ様でした。
今年の入試問題全体を振り返ると、単なる知識の暗記だけでは太刀打ちできない「思考力・情報処理力・記述力」を深く問う傾向が、さらに明確になった年と言えます。
この記事では、学習塾の指導者としての専門的な視点から、今年の5教科(国語・数学・社会・理科・英語)それぞれの出題傾向と難易度を詳細に分析しました。さらに、「来年の受験生が今からどのような対策をしていくべきか」という実践的なアドバイスもまとめています。
これからの学習の指針として、また志望校合格に向けた戦略作りの参考に、ぜひ最後までお読みください。
1.国語
【総評】各大問の配点は例年通り。記述形式はやや変化したが「易化」
3年連続で各大問の配点が全く同じであり、全体的な問題構成も大きな変化はありませんでした。そのため、部分的な設問形式の変更や、大問2での記述量の増加があったものの、受験生にとっては昨年と比較して「易化」したと分析しています。
以下、各大問ごとの詳細な傾向と分析を解説します。
大問1:論説文(配点31点)
今年の出典は哲学系の文章(古田徹也「いつもの言葉を哲学する」)でした 。近年、長野県の国語では「実生活との結び付き」を感じさせるテーマが好まれる傾向が続いています。
段落の内容をまとめる問題において、これまでの「指定文字数を抜き出す形式」から「段落中の言葉を使って書く形式」 へと変化しました。
条件(テーマについての自分の考えと、その根拠や理由を具体的に書くことなど)が明確に与えられており 、比較的書きやすい設問でした。
5年連続で「品詞に関する問題」が出題されています。今年も昨年に続き、品詞の識別が問われました 。
大問2:実用文・意見文(配点18点)
クラスの活動に関する4つのスライド資料と発表内容、それに対する助言を読み解く問題でした 。大学入学共通テストの「実用文」に近い、現代的な出題形式です。
- 情報処理能力の重視
横書きのスライド資料が4つに増え、複数の情報を関連付けて読み解く力が求められました。
- 記述量の増加
文字数を多く書かせる記述問題が2問出題されました。合計で100文字近い記述が必要となり、ここで時間を削られ、この大問については例年よりも難しく感じた受験生が多かったはずです。
大問3:漢字(配点9点)
ここ数年は「文章中の間違い探し」が3問出題されていましたが、今年は1問のみに減少しました 。
書き取り3問のうち、久々に四字熟語の一部(今年は「晴耕雨読」)を漢字で書かせる問題が出題されました 。
大問4:古文(配点18点)
今年は漢文の出題はなく、古文のみとなりました。3年連続で「随筆」からの出題となっており、鎌倉時代の『徒然草』と江戸時代の『玉勝間』の2つの文章を読み比べる構成です 。
単なる現代語訳や抜き出しではなく、生徒同士の会話文をヒントにしながら2つの異なる時代の文章を比較・考察する必要があり 、苦労した生徒が多かったと推測されます。
大問5:小説(配点24点)
出典は坂本葵の『その本はまだルリユールされていない』でした 。主人公は社会人ですが、現代が舞台であり、中学生にとっても比較的感情移入しやすく、読み進めやすい文章でした。
例年になく、登場人物の心情やその変化を深く問う問題が多く出題されました 。
- 総合的な読解力
登場人物のセリフ、細かな行動、情景描写(レトリック)などを丁寧に拾い上げていく必要があり、比較的平易ではありながら国語の総合力が問われる良問が揃っていました。
【来年度へ向けて】今後の国語の学習ポイント
長野県の国語は、単に漢字を覚えたり文章を読んだりするだけでなく、「複数の資料から必要な情報を抜き出す力(大問2)」や「異なる文章を比較して共通点を見つける力(大問4)」が強く求められています。
日頃から、文章の表面的な意味を追うだけでなく、「筆者はなぜこの表現を使ったのか」「登場人物の行動の裏にはどんな感情があるのか」を深く考える習慣をつけましょう。また、記述問題の文字数が増えてきているため、自分の考えを決められた文字数で過不足なくまとめる記述力・要約力のトレーニングが必須です。
2.数学
【総評】純粋な数学力が試される形式へ回帰。「動点」や「図形の最短距離」など苦手分野での差がつく入試に
一昨年まで見られた「実生活との結び付き」を強調する文章や、生徒同士の会話文などの「装飾」が減り、シンプルに数学力を試す形式へと変化しました 。
一方で、関数の「動点問題」や、立体の「最短距離」など、多くの受験生が苦手とする分野から出題されており、差が付く出題だったとも考えられます。各大問の詳細な分析は以下の通りです。
【問1】小問集合(配点36点)
出題された6問の計算・方程式問題は、比較的計算しやすいものが揃っていました 。ケアレスミスにさえ気をつければ、全問正解も十分に狙える難易度です。
計算以外の問題(確率、作図など)も基礎的な内容が中心であり 、例年に比べて点数を取りやすい印象でした。
【問2】中問集合(配点20点)
昨年に続き、3つのテーマからなる3題構成でした 。やや難易度が高く、受験生の弱点を突く問題が目立ちます。
A中学校とB中学校のデータを比較する度数分布表を用いた問題で、形式としては非常にスタンダードでした 。
花壇と道の面積について、文字式を使って表す問題です 。教科書レベルの標準的な内容ですが、この「文字を使った説明」を苦手とする生徒は多く、完答できた割合は低いと思われます。
円錐の側面に糸を巻き「最短距離」を求める問題です 。こちらも問題集によくある標準レベルですが、補助線の引き方、展開図の中心角の求め方などのプロセスを苦手とする生徒が多く、差がついた一問です。
【問3】関数(配点24点)
速さと距離に関する一次関数の文章題と、久々となる「動点問題」の2題構成。近年頻出だった「グラフと図形問題」は出題されませんでした。
グラフから変域や式を読み取る形式です 。問題の設定自体はよくあるものですが、文章による説明を求められる設問が複数含まれており 、とっつきにくさを感じた受験生が多かったはずです。
長方形の辺上を2つの点P、Qが動く問題です 。平成25年以来、長らく過去問でも見かけなかったテーマです。「実生活との結び付き」という出題の縛りがなくなったことで、純粋な数学的思考を問うために復活したと考えられます。難易度自体は標準的ですが、対策が手薄になっていた生徒は苦戦したでしょう。
【問4】平面図形(配点20点)
ここ数年の傾向通り、円に内接図形ではなく3年連続で「多角形(長方形)」を題材とした図形問題が出題されました 。
- 高い図形的センスが要求される
ⅠとⅡで同じ図形が用いられていますが、それぞれ独立して考える必要があります。Ⅰは基本的な内容でしたが、Ⅱは、自分で補助線を引き、相似な図形をいくつも見つけ出した上で「連比」を使う必要があり、今年の数学の中で最も難易度が高い問題でした。
【来年度へ向けて】今後の数学の学習ポイント
ここ2年の出題傾向から、長野県の数学は「小手先のテクニックではなく、ごまかしの利かない純粋な数学力」を求めていることが明確になりました。
特に、今回出題された「動点」や「文字式による説明」「空間図形の最短距離」などは、何となく公式を暗記しているだけでは太刀打ちできません。「なぜその式になるのか」「図形がどう変化していくのか」を、普段の演習から論理的に考え、手を動かして図やグラフを自分で描くトレーニングが必須です。計算問題で確実に点数を確保した上で、これらの苦手分野にどれだけ向き合えるかが来年の合否を分けるでしょう。
3.社会
【総評】歴史の配点が増加しバランスがよくなった。記述問題の「時間配分(タイパ/コスパ)」が合否を分ける!
平均点が70点を超えた昨年と比較すると「やや難化」した印象を受けます。
長野県の入試では度々入れ替わる「地理と歴史の出題順」ですが、今年は令和3年度以来となる「大問1が地理、大問2が歴史」という構成になりました。また、歴史の配点が上がり、地理・歴史・公民の配点バランスが均等に近づいています。
各大問の詳細な傾向と分析は以下の通りです。
大問1:地理(配点34点)
日本地理は東北地方 、世界地理はアフリカ州(ルワンダなど)からの出題でした 。
長野県の地理は表やグラフ、地形図の読み取りがメインですが、今年は東北地方を新幹線で通過する際の県名(福島県)を問う問題や 、「地熱発電」という用語を直接書かせるなど 、例年よりも知識をストレートに問う問題が増加しました。
- 見慣れない国への対応(世界地理)
昨年のサウジアラビアに続き、今年はルワンダが取り上げられました 。入試であまり見かけない国のため焦った受験生もいたかもしれませんが、問われている内容自体は標準レベルであり、落ち着いて資料を処理すれば確実に得点できる構成でした。
大問2:歴史(配点32点)
Ⅰは例年のような特定のテーマがなく、略年表を見て解く非常にシンプルな設定でした 。一方、Ⅱは「民衆による運動」がテーマです 。「アジア・アフリカ会議」を書かせるなど 、全体を通して近現代史からの出題が目立ちました。
- 「流れ」の理解が必須
単純な一問一答形式の問題は3問にとどまりました。単なる用語暗記ではなく、その用語の背景や時代の流れを正しく理解しているかが問われています。
大問3:公民(配点34点)
「基本的人権」をメインテーマとした出題で 、経済や地方自治に関する出題は控えめでした。
長野県の社会で毎年受験生を悩ませるのが、最終問題付近に配置される長文記述です。今年は「無電柱化」をテーマに、その課題と、防災面からA・Bどちらの地域を優先すべきかを論じる問題でした 。 複数の資料を読み込み 、指定された条件に従って60字以上80字以内で論理的に記述する必要がありますが 、この問題の配点はわずか5点です 。労力に対する得点(コスト/タイムパフォーマンス)が依然として悪いため、ここでの時間の使い方が大きな鍵となります。
【来年度へ向けて】今後の社会の学習ポイント
今年の傾向からも分かる通り、長野県の社会で高得点を狙うには「捨てる勇気」と「時間配分」というテストの受け方の戦略が非常に重要です。
大問3の最後にあるような長文記述問題は、いくら時間をかけても最大5点しか得られません 。そのため、まずは地理や歴史の基本問題、資料読み取り問題など、確実に取れる箇所から先に解き進めるトレーニングを徹底しましょう。日頃の過去問演習から「この記述問題には何分まで使うか」というマイルールを決めておくことが、本番での得点力に直結します。
4.理科
【総評】「実生活の結びつき」が薄れ、シンプルな実験・観察問題へ回帰。計算も減少し「やや易化」
令和4年度などに顕著だった「実生活との結びつき」を強調するような長文や設定が、数学と同様にほぼ見られなくなりました。
純粋に実験の結果や科学的な知識を問うシンプルな構成となり、計算問題も減少したため、全体的な難易度としては「やや易化」した印象を受けます。しかし、出題頻度の低い単元からの出題もあり、知識の抜け漏れが点差を分ける結果となりました。
各大問の詳細な傾向と分析は以下の通りです。
大問1:生物(配点25点)
細胞分裂と消化吸収に関する出題でした。
- Ⅰ 細胞分裂
タマネギの根の成長を観察する問題です。 教科書や問題集でよく見る定番の観察であり、「酢酸オルセイン溶液」といった指示薬や酵素の名称を直接答えさせるストレートな知識問題が多く出題されました。
- Ⅱ 消化吸収
セロハンを使ったデンプンと糖の大きさに関する実験です。実験設定自体は見慣れない生徒もいたかもしれませんが、「だ液はデンプンを分解する」という基礎知識があれば、それほど苦労せずに解答を導き出せたはずです。
大問2:化学(配点25点)
イオン(酸・アルカリ)と化学変化(化合)からの出題でした。
- Ⅰ イオン(酸・アルカリ)
リトマス紙を使った酸・アルカリの正体を調べる実験です。 実験の形式も頻出パターンであり、難易度は標準的でした。
- Ⅱ 化学変化(化合)
マグネシウムと銅の加熱に関する出題です。問題の難易度は高くありませんが、「ガスバーナーの空気調節ねじの操作」など、実験器具の正しい使い方を問う問題が出題されています。長野県では定期的に実験道具の操作が問われるため、注意が必要です。
大問3:地学(配点25点)
「地震」と「月」という、受験生が手薄になりやすい単元からの出題でした。
- Ⅰ 地震
地震に関する出題は、ここ15年でも3回程度と頻度が低いため、戸惑った受験生もいたかもしれません。しかし、地図やグラフから震源やマグニチュードを読み解く、入試としては非常に典型的なパターンでした。
- Ⅱ 月の見え方・動き
月に関する本格的な出題は令和になって初となります。空間図形的な理解が必要で、そもそも苦手とする生徒が多い単元のため、完答できた受験生はかなり少なかったと推測されます。ここが今年の理科で最も差がついたポイントでしょう。
大問4:物理(配点25点)
力学的エネルギーと電磁誘導に関する出題でした。
- Ⅰ 力学的エネルギー(台車の運動)
コースの違いによる台車の移動時間を比べる問題です。 計算がメインとなり、今年の理科の中では比較的難易度が高い部分でした。「等速直線運動」といった用語問題や、重力の分力を書かせる作図問題で確実に点数を確保できたかが鍵になります。
- Ⅱ 電流と磁界(スピーカーの仕組み)
コイルと磁界の変化に関する出題です。単元自体は頻出ですが、ゴム膜を使った今回の実験設定は、過去問などでもあまり見かけない初見に近い問題でした。しかし、問われている内容は「磁界の向き」や「力の向き」といった基本的な事項ばかりなので、落ち着いて取り組めば十分に得点できる内容でした。
【来年度へ向けて】今後の理科の学習ポイント
今年の理科は、奇をてらった問題は減り、「教科書レベルの基礎知識と、基本的な実験操作の理解」がストレートに問われました。
特に注意したいのは、「月」や「地震」のように「最近あまり出ていないから」と対策を後回しにしてしまう単元です。長野県の入試は数年周期で出題分野が入れ替わる傾向があるため、ヤマを張ることは非常に危険です。全単元の基礎知識をまんべんなく固めるとともに、ガスバーナーや顕微鏡などの「実験器具の正しい操作方法」も確実に復習しておきましょう。
5.英語
【総評】形式は昨年踏襲も、圧倒的な「英文量」で情報処理スピードが合否を分ける
令和8年度の後期選抜学力検査問題「英語」は、問題の構成や記号・記述の配点比率(66:34)が昨年と全く同じでした。過去問対策を徹底していた生徒にとっては、傾向の変化に戸惑うことなく実力を発揮しやすい試験だったと言えます。
しかし、今年は「読むべき英文の種類と単語量」がさらに多くなっており、記号問題の割合が高いにもかかわらず、長野県全体の平均点は昨年よりも下がるのではないかと予想しています。大学入学共通テストを強く意識した「情報処理能力」が試される出題となっています。
各大問の詳細な分析は以下の通りです。
大問1:リスニング(配点20点)
- オール選択式へ回帰
ここ数年出題されていた「英単語を実際に書かせる問題」がなくなり、すべて記号を選択する形式に戻りました。
- 共通テスト化するリスニング
音声を聞くだけでなく、問題用紙に描かれた「メモ」や「リスト」を見ながら答えを導き出す形式が増えています。耳と目を同時に働かせる情報処理が求められます。
大問2:会話文・短文読解(配点29点)
- 文法の「深い理解」が必須(Ⅰ)
( )内の単語を変化させる問題は、単なる過去形や進行形への変形ではなく、「主語は何か」「疑問文か肯定文か」を判断して数語の英語を書く部分英作文の形式が定着しています。
- 日本語のアドバイスを英語に変換
「5人の生徒が存在することを表す文に(There are〜)」、「命令ではなく、意見を表明する文に(I think that〜)」といった、昨年に続き、文法を「使う力」が試される良問が出題されました。
- 実用的な読解(Ⅱ)
メールや駅の掲示板(トラブル時の迂回ルート案内など)を読み解く問題でした。こちらも共通テストに通じる、日常のリアルな場面を想定した出題です。
大問3:複数の長文読解・自由英作文(配点23点)
「オーストラリアの姉妹校の生徒との半日観光」という1つのテーマに対し、チャット、2つの広告、新聞の投稿、雑誌の記事など、複数の異なる媒体の英文を読んで解く問題です。
- 情報検索スピードが鍵
1つの設問に答えるために、複数の文章をまたいで情報を探し出し、関連付ける必要があります。すべての英文を漫然と和訳するのではなく、「何が問われているか」を先に把握し、要旨を素早く掴む力(大学受験などでは「スキミング・スキャニング」とも呼ばれます)が強く試されています。条件に合わせて20語以上で理由を書く自由英作文も健在です。
大問4:説明文の長文読解(配点28点)
今年は「ブルックリン橋の建設に関わった家族の歴史」についての長文でした。
- イラストの並べ替え問題
昨年に続き、英文のストーリー展開に合わせて3枚のイラストを順番に並べ替える問題が出題されました。これはここ2年の新しいトレンドです。
- 時間切れに注意
空欄補充や要約、タイトル選択など設問の形式自体は今までの傾向通りですが、とにかく文章量が多いため、大問1〜3で時間を使いすぎた生徒は、最後まで読み切る前にタイムアップになってしまった可能性があります。
【来年度へ向けて】今後の英語の学習ポイント
長野県の英語は、文法知識を単独で問うような古い形式から完全に脱却し、「大量の英語を読み聞きして、必要な情報を素早く見つけ出す力」を測る試験へと進化しています。これはまさに、大学入試(共通テスト)のミニチュア版と言える傾向です。
単語帳や文法書での暗記学習はもちろん大切ですが、それ以上に「時間を測って長文を読む」「ポスターやグラフを含む英語の資料に触れる」といった、速読と情報処理のトレーニングが今後の英語攻略の最大の鍵となります。
【保護者の皆さまへ】
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回の入試分析からもお分かりいただける通り、現在の長野県の高校入試は「複数の資料から素早く情報を読み解き、自分の考えを決められた文字数で表現する力」が強く求められています。一昔前の「暗記中心の勉強法」だけでは、確実な得点に結びつけることが難しくなってきています。
日頃の進路面談等でも、保護者の皆様から「今の勉強法のままで通用するのか不安だ」「記述問題や初見の問題にどう対応させればよいか分からない」といった切実なお悩みを数多く伺います。入試制度や問題の傾向が変化していく中で、ご不安を感じられるのは当然のことです。
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