卒業生x校舎長対談 卒業生x校舎長対談

医学部志望でまつがく佐久岩村田駅前校に入ったS. R. さんは、工夫して学習時間を確保し、苦手科目も少しずつ伸ばしていきました。しかし高3になって、今年度新しくできた福井県立大学恐竜学部に志望校を変える決心をします。

注目度の高い新設学部ゆえに合格ラインが読み切れないという難しさを前に、最後まで気を抜くことなく走り抜けました。恐竜好きの同級生に囲まれ大学生活のスタートを切ったS. R. さんと、きめ細やかに見守ってきた阿由葉塁先生のふたりで、大学受験期を思い出しながら語り合いました。

S. R. さんのデータ

●出身校/新島学園中学校・高等学校 ●将来の夢/博物館の学芸員

高1・12月

まつがく佐久岩村田駅前校に体験を経て入塾。atama+で英語・数学をはじめる。当初は北海道大学医学部志望。学年プラス2時間の学習時間を目標にする

高2・5月

目標の学習時間を確保できるようになり、atama+数学は「解法パターン」(応用単元学習)に進む

2月

フィリピンに医療ボランティアに行く

3月

受験科目などを考えて旭川医大、秋田大学に志望を変える

高3・5月

第一志望を福井県立大学恐竜学部に変更する。ここから模試の判定はAをキープ

7月

家族とイギリス旅行。大英博物館に行く

11月

ベネッセの共通テスト模試で英語リーディング100点満点

1月

共通テスト受験

2月

前期日程で福井県立大学恐竜学部を受験

3月

合格

現在

福井県立大学に通う

1. 国公立大医学部を目指して

高校受験を経験していないことが不安だった

阿由葉

大学生活はどうですか。

S. R.

楽しいです(笑)。ひとり暮らしも楽しくやっています。

阿由葉

S. R. さんは高1の12月にまつがくに入りました。通っていた新島学園は中高一貫校なので、大学受験を意識し始めるタイミングも早かったですか?

S. R.

たしかに早かったかもしれません。ただ、繋がりのある同志社大学をはじめ、指定校推薦で進学する人が多いので、一般受験よりも指定校推薦の説明が多かった気がします。

阿由葉

当初は北海道大学の医学部を志望していました。塾を探したのは、自力では厳しいという気持ちがあったからですか?

S. R.

高校受験を経験していないことが不安要素としてありました。大学受験でいちばん感じたのは、受験に向けて長期間勉強し続ける習慣が身についていなかったことです。あとは、苦手科目を放置する悪い癖があって……。数学が大嫌いだったんです。まつがくでatama+を体験して、苦手なところを重点的に潰すのにいいと感じました。

阿由葉

新島学園で同志社大学以外の進路を考えているのは珍しいので、かなり強い意志を持って来ているんじゃないかと思いながらお話ししました。医学部を志望するきっかけは、ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』も影響があったみたいですが(笑)、他にもありますか?

S. R.

両親の影響がありました。母は麻酔科医、父は内科医で、ずっと「かっこいいな、あんな大人になれたらな」と思っていました。北海道大学はオープンキャンパスに行って、ただただ憧れていました。

阿由葉

北大は、現地に行くとより憧れますよね。

やる気を保って学習時間を増やす工夫

阿由葉

難易度の高い国公立大医学部志望ということもあり、当時のatama+スタッフの方も交えて勉強の方針を話し合いました。それで、数学の基礎固めは2年生までにやることと、学年プラス2時間の学習時間を取ることを目標にしました。毎日コンスタントに3~4時間の学習時間を確保するのは大変だったでしょう。

S. R.

数学・英語・理科を高1の基礎からはじめて、最初は授業内容の復習からはじめました。最初はモチベーションが高かったこともあって、いいスタートを切れました。あとは、やる気のあるうちに苦手な教科に手をつけて、辛くなってきたら息抜きとして好きな教科の勉強をするようにしていました。

阿由葉

高2のはじめから、勉強は軌道に乗った印象でした。

S. R.

勉強すること自体は辛くなかったんですが、結果が出るまでタイムラグがありました。

阿由葉

たしかに7月の模試は良くなかったですが、11月頃には盛り返してきていました。勉強時間が取れるようになったのは大きいですよ。佐久市から群馬の新島学園に通うのは、大変ですからね。

S. R.

部活は美術部であまり時間は取られなかったんですが、通学がバスで片道1時間半かかります。バスの中で英語のリスニングを聞いたり、単語を見たり、古文の助動詞を勉強したりしていました。

阿由葉

受験勉強で苦労した点として「集中力の維持」、受験を通して得たものは「効率の良い時間の使い方」と言っていましたが、通学時間を有効利用したり、モチベーションに合わせて苦手科目と得意科目をスイッチしたりと、工夫していたことがよく分かります。

2. 医学部から恐竜学部へ

悔いを残さないために

阿由葉

高3の5月に進路を変えました。

S. R.

勉強はある程度計画通りに進めていましたが、決して進度が速かったわけではないので、「このまま進んで大丈夫なのかな」という不安がありました。それで、ここで一旦考え直しました。

阿由葉

生物・英語・地理は問題なかったですが数学と化学がどうしても後手に回ってしまいましたね。あと、正直言うと「S. R. さん、本当に医学部に行きたいのかな?」という違和感が実はありました。

S. R.

前から感じていましたか?

阿由葉

そうですね。S. R. さんが一生懸命やっているのは事実ですが、コーチングの時の話しの中で「あれ?」と思うことがあったし、「医学部に行くぞ!」という気迫というか軸があまり感じられない。だから、高3の5月に、福井県立大学恐竜学部に行きたいとなった時に、腑に落ちる感覚がありました。「本当にやりたいことを言ってくれた!」みたいな。

S. R.

幼い時、東京・上野の国立科学博物館に何度も連れていってもらって、すごく好きだったんです。

阿由葉

志望をガラッと変えるのは、勇気がいったでしょう。

S. R.

そうですね……自分としては、きっぱりと「こっちにしよう」と確信があったんですが、家族は医学部に進むと思って応援してくれていたので、申し訳なさと後ろめたさがありました。家族には、阿由葉先生に話した後に話しました。なかなか切り出せなくて。

阿由葉

ご両親の反応はどうでしたか。

S. R.

最初は、「逃げで変えるなら後悔するからやめておきなさい」と言われました。

阿由葉

厳しい一言ですね。

S. R.

「もうちょっとよく考えてみて」とも言われました。それで自分でしっかり考えて、そのうえでやっぱり福井県立大の恐竜学部に行きたいと言ったら、最終的に「悔いが残らないなら、そちらを応援するよ」と言ってくれました。

海外での体験もモチベーションに

阿由葉

高3の7月にはイギリスへ行きました。

S. R.

弟が高校受験を終えて、イギリスに行きたいと言い出したんです。大英博物館が見たかったらしくて。

阿由葉

博物館好きのS. R. さんとしては、乗らない手はないよね(笑)。

S. R.

受験生だから迷ったんですけど、英語の勉強と言ってついていきました(笑)。

阿由葉

大英博物館、どうでしたか。

S. R.

規模がすごかったです。5時間ほど滞在しましたが、4分の1くらいしか見られませんでした。欲を言えば1ヵ月間イギリスに滞在して、毎日通いたいくらいでした。

阿由葉

高3の受験期に海外旅行は考えちゃいますよね。でも、S. R. さんの進路を考えるとやる気につながったんじゃないかと思います。

S. R.

旅行の前日に模試があって、「これが終わったらイギリスだ」とがんばって勉強できました。帰国後も、「他の受験生が絶対やらないようなことをやったから、やるしかない」とがんばれました。

阿由葉

期間は1週間弱だったので、じゅうぶん巻き返せると思って送り出しました。高2の2月後半には、フィリピンで医療ボランティアもしていましたよね。

S. R.

マニラのスラム街で、歯科治療のサポートをしました。機材の運搬や治療の説明をしていました。

阿由葉

行ってみて発見はありましたか?

S. R.

経済的に苦しい人がどういう感じなのか想像がつかなかったんですが、みんなすごく明るいんです。治療の不安などがあるはずなのに、ずっと笑顔で「ありがとう」と言ってくれて。お金の有無と関係なく、こんなに人生を楽しく生きている人がいることに心を動かされました。

注目の新設学部は合格ラインが読めない

阿由葉

志望を変えたことでこれ以降の模試はずっとA判定でした。気が抜ける可能性もありましたが、どうやってモチベーションを維持していましたか?

S. R.

福井県立大の恐竜学部は新設なので志望者数が多くて、定員に対しての自分の順位を見ると結構ギリギリでした。だから、まだまだ勉強しないとまずいと危機感がありました。

阿由葉

「A判定出て良かったね」と言っても「いや、まだ○位なので」とずっと言っていましたよね。自分を律していることが伝わってきたので、こちらは逆に「このまま行けば大丈夫だよ」と伝えることを意識していました。「必要以上にネガティブになってもしょうがない」という話はずっとしていた記憶があります。

S. R.

夏休み明けから共通テストまでは、得意な教科は学校の補習で完結するように意識して、苦手は数学と化学は、家やまつがくでやるようにしていました。

阿由葉

それで、11月のベネッセの共通テスト模試では得意の英語リーティングが100点。模試で100点はすごいですよ! 国語は150点、数学も7割近くは取れていましたよ。化学が……。

S. R.

18点(笑)。

阿由葉

化学は最後まで苦労しましたね。

S. R.

高2で化学基礎はやっていたけれど、共テの出題方式に慣れるための勉強は高3からだったから、スタートが遅かったかもしれません。点数も上がらないからやる気も出ない。

阿由葉

良くない循環になってしまいました。

3. 恐竜愛を学びに変えて

柔軟に考えられる力をつけた

S. R.

共通テストは、1日目の数学は本当に緊張したし、元気がなかったんですけど、数学が終わった後の英語はすごく楽しかったです(笑)。

阿由葉

点数は、取れると思っていた教科がそこそこで、苦手な教科で踏ん張りました。福井県立大の前期日程は、生物と英語だけでしたね。

S. R.

得意な2科目なので、いつも通りやれば大丈夫と思って臨みました。

阿由葉

S. R. さんは、受験勉強でいちばん力がついたこととして、ひとつの考えにとらわれず柔軟に考えることを挙げてくれていました。

S. R.

数学の共テ対策をしている時に気づきました。共テの数学はいろんな考え方を持ち込まないと解けないじゃないですか。最初の頃は、三角関数だったら三角関数しか使わないはずだと思い込んで、行き詰まって混乱していました。「何でもあり得る」と思えるようになってようやく、じゃあこれも試してみようと応用できるようになりました。

自分を知り、戦略を持てる強さ

S. R.

恐竜学部は3年生に上がる時に成績順で地質系と古生物系にコース分けされます。やっぱり古生物系が人気です。

阿由葉

みんな恐竜愛を競いながら4年間やっていくんですね。

S. R.

恐竜好きが圧倒的に多いんですが、地球や宇宙といった環境に関心がある人もいます。高校で地学を学んで大好きになったという人もいますよ。

阿由葉

今後は大学院まで行きたいんですよね。留学も考えていますか?

S. R.

留学はしたいですね。教授陣の中に、大学時代にアメリカはモンタナの州立博物館の発掘調査に乗り込んだ先生がいるんです。海外のほうが化石は見つかりやすいので、いつか参加してみたいです。

阿由葉

これから受験する人に向けてアドバイスがあればお願いします。

S. R.

できないことは恥ずかしいと思わずに、どんどん相談したほうがいいです。あとは、一緒にがんばれる仲間がいるといいですね。友だちと勉強するのは否定的な意見もありますが、私はお互い高め合える相手がいたのがすごく良くて、得意な科目を教え合ったり、おすすめの参考書をたくさん教えてもらったりしていました。頼れる部分は頼ったほうがいいと思います!

阿由葉

中高一貫校は付き合いが長くなるので、その良さもありますよね。

僕がS. R. さんを見ていて感じたのは、個人戦略をちゃんと持っていたことですね。苦手な数学と化学にどう対応するか、問題の性質と自分のクセをどう見極めるか、自己分析して戦略を持っていましたよね。そういう人はやはり受験に強いと改めて思いました。

S. R.

ありがとうございます。

阿由葉

いい研究者になって、思い切り活躍してください!

取材・文/くりもときょうこ