卒業生x校舎長対談 卒業生x校舎長対談

まつがく柳町教室(長野市)は、中学受験から大学受験まで幅広くカバーしています。
長野西高校3年(2021年12月時点)の小口泰希さんは大学受験のために、
中学生の時から通っている自宅近くの教室と柳町教室を掛け持ちして、国立大学の公募推薦入試に合格しました。
理系ながら歴史好きという校舎長の松本伸司先生いわく、
「そうとう頑張った」という小口さんの受験勉強は、本格的な口頭試問に苦しめられる展開に。
本番で「頭が真っ白になってもうダメだと思った」という小口さんでしたが、無事合格を手にします。
一発大逆転かと思いきや、背景には納得の理由がありました。
奇跡でも離れ技でもない確かな積み重ねの日々を、小口さんと松本先生に振り返ってもらいました。

小口さんのタイムライン

中1・3月

中1・3月 まつがく安茂里教室に入塾

高校受験

中学時代の成績は平均の少し上くらい。中3・4月のテストから急に成績が伸びて、志望校の長野西高校に合格

高1

入学時の成績は、約240名中90番くらい

高2・3学期

大学受験に向けて、平日は高3の勉強サポートのために安茂里教室、土曜日は受験勉強対策で柳町教室と、2つの教室に通うことに。

高3

学校での成績は70番台まで上がっていた。将来は鉄道や高速道路のようなインフラ系の仕事に就きたいと、この時点での志望校は新潟大学工学部工学科。柳町教室では、「まつがく予備校受験コース」で英・数・物理・化学・古典など、共通テストに必要な科目を一からやり直すことに

高3・1学期

高3の1学期は班活(部活)の最後の大会と文化祭があり、勉強は少しずつ遅れだす

7月

模試結果や受験科目を検討し、さらに興味のある研究をしている先生がいることがわかって、第2志望だった群馬大学が第一志望に

10月

群馬大の公募推薦に挑戦することになり、面接と口頭試問の練習に明け暮れる

11月

試験本番は頭が真っ白になってしまったが、何とか終了

12月

試験から半月後の合格発表で、無事合格

中3から急に成績が上がった

母の友人からすすめられて入塾

松本

安茂里教室には、中1の3月に入塾したんだよね。

小口

中1の頃は勉強ができなくて、テストも平均点くらいしか取れていませんでした。それじゃさすがに高校受験はヤバイんじゃないかと思って、塾に行くことを考えました。

松本

まつがくを選んだのはどうして?

小口

母の友人のお子さんが昔ここの教室(注:柳町教室)に通っていて、「すごくよかったよ」とすすめられたのがきっかけです。自宅のすぐ近くにある安茂里教室の春期講習から入って、よさそうだと感じたのでそのまま続けました。個別指導で、数学と英語を習っていました。

まつがくで勉強のやり方がわかった

松本

長野西高校に行きたいと思ったのはいつ頃から?

小口

入塾の時なんですよね。入塾体験の時に担当してくださった先生から、「目標はどこにしたい?」と聞かれて。当時は自分が知っている高校が西高と長工(長野工業高校)しかなくて(笑)。そこそこ知名度の高い西高にしようかな、という軽い気持ちでした。

松本

どちらも家から近い高校だね。

小口

まつがくに入ったことで、中2の時は平均より上になりましたが、そこまで高い点数がとれているわけではありませんでした。それが、中3になって突然成績が上がったんです。中3になる春休みの時になかなか(学校の)課題が終わらなくて、図書館に通ってずっと勉強をしていたのがよかったのかもしれません。

松本

根を詰めて勉強したのも効いたんだろうけど、その前の積み重ねがあったからこそだね。

小口

たしかに、それまでも学力がじわじわ伸びている手ごたえはありました。その春休みの時ほど集中的に勉強したことはなかったんです。そもそも、塾に入るまでは勉強のやり方を分かっていなくて。勉強のやり方というのは、同じ問題を繰り返しやることです。それで、学校のワークも何回もやるようになりました。

松本

勉強は、インプットとアウトプットだけじゃなくて、定着のために反復も重要です。

小口

中3の4月のテストで、自分でも驚くほど成績が伸びました。「点数に繋がっているな」という実感を得て、その時から勉強のやる気が出るようになりました。その後、特に数学と英語の成績は安定しました。

中学では技術部、高校では硬式テニス部に

松本

それで長野西高校に合格するんだけど、入る時はギリギリだったんだよね。

小口

そうですね。高校入試の直前の判定までは、合格ギリギリのラインでした。それで、私立の文化学園長野高校も受験しました。

松本

高校では、1学年約240人の中で90番くらい。あともう少しで上位三分の一に入る位置につけていたね。部活は何をやっていたんだっけ?

小口

硬式テニス班に入っていました。中学の時は自分、技術部だったんですよ。小さい頃からレゴブロックがすごく好きで、つくることに興味があったので。高専ロボコン(アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト)の中学バージョンの大会があるんですけど、それに出品するためのロボットをつくっていました。実際に大会に出て、長野県大会の決勝まで行ったんですよ。高校では運動部特有の雰囲気を体験してみたくて、運動部に入ろうと中学の頃から決めていました。

松本

マンガの『テニスの王子様』みたいな?

小口

(笑)。まわりはソフトテニス経験者ばかりで初心者は自分だけだったので、最初はかなり悲しかったですね。みんなが教えてくれて、できるようになりましたが。あと、1年生の男子は4人しかいなかったので抜けるとダブルスを組めないから抜けられない、という思いで続けました。部活は和気あいあいとした雰囲気で、部活の友だちともクラスメイトとも関係は良かったです。

松本

高校に入ってからまつがくにはどういうペースで来ていたの?

小口

月曜、木曜の週2回、だいたい1時間半くらい英語と数学をやっていました。幸い、高校に入って勉強が難しくなったという感覚はなかったです。

松本

高校は特に数学が難しくて脱落する人が多いから、それはよかった。工学系の大学を目指したのは、インフラ系の仕事に就きたいからというのがあったんだよね。

小口

はい。お仕事密着のようなテレビ番組で、ものづくり、特にインフラ関係の仕事が特集された時に、自分もこういう仕事をやってみたら面白そうだなと思ったのがきっかけです。鉄道のJRや高速道路のネクスコのような仕事です。だから、高1の段階で工学系に進みたいと決めていました。

松本

レゴが好きだったというのとつながるね。今は、小口くんのようにインフラ関係に進みたいという生徒は多いですよ。

受験に向けて2つの教室を行き来

一からやり直し

松本

そして、高3から2教室掛け持ちに。ここ柳町教室は、西高にすごく近いんだよね。ただ、小口くんの自宅からのルートからは少し外れる。それで、毎日は無理なので来られる時に来るという話になって、僕は小口くんとは高3の5月からの付き合いです。

小口

はい。安茂里教室は自宅のすぐそばです。

松本

自習や通常の勉強は安茂里で、柳町は共通テスト対策など受験対策という使い分けでした。共通テストは全科目やることになりますが、全科目を共通テストのレベルで指導できる先生はそう多くないのが塾業界の実際ということもあります。小口くんのように2教室掛け持ちする人は他にもいます。どの科目をどれだけ取っているかで金額が変わる仕組みなので、掛け持ちで金銭的負担が増えるということはありません。
最初、数学のテキストなどを小口くんにやってもらって、「勉強できないな。きついなー」と思いました

小口

いやぁ、そこは自明ですね。自分自身、西高に通っていて、国立理系はこのままだとちょっと厳しいとは感じていたので。

松本

これは小口くん個人ではなく高校生みんなに言えることで、自分が通っている高校のレベルの中で成績上位だとこれでOKと思ってしまうわけです。でも、共通テストのレベルに照らし合わせると、必ずしもそうではない。学校のレベルを超えないと歯が立たない場合もあります。そこの意識をまず変えてもらって、相当鍛えないといけないというのが小口くんの最初の状態でした。もちろん、最初からガツンとやってしまうと本人のやる気がなくなってしまうので、慎重にやらないといけませんが。

小口

そうですね。

松本

もちろん小口くんは、基礎はそれなりにできていたんです。ただ、そのレベルと共通テストのレベルにギャップがあったので、一から共通テストのレベルでやり直す必要はありました。だから、数学は数Ⅰの最初からやったね。英語も最初から。

小口

やりましたね。

松本

かなりハードにやらなきゃいけない状況で、最初からがんばってくれていました。それが、高3の前半はどうしても部活の最後の大会や文化祭などのイベントが重なってしまって、遅れ気味になっていったんだよね。

最後の文化祭のジレンマ

小口

部活の最後の大会は5月の終わりくらいでした。

松本

西高は、そのあとに文化祭だもんね。

小口

はい。文化祭は7月の頭ですね。

松本

去年はリモートや中止があったけれど、今年は普通にやったでしょう?

小口

はい。お客さんを外から呼ばない点だけ違っていましたが、あとは普通の文化祭です。自分は放送委員会の副委員長だったので、文化祭では実行委員になってリモートプログラムを担当していました。6月の下旬から7月の頭までは、時間も労力もすべて文化祭に振り向けていました。

松本

教室にも来なかったよね。高校生は毎年そうなんですよ。こればかりはどうしようもない。去年、小口くんのひとつ上の先輩で、西高の生徒会副会長がいたんですよ。副会長なんで文化祭に一生懸命なんですが、それだと絶対に大学は受からないから、あえて「やめろ」と言いました。そうしたら「友だちをなくす」と。「友だちをとるか、来年の入試をとるか、どっちか選べ」と言ったら、友だちをとりました。そうとうケンカしましたけどね(笑)。

小口

その先輩は、受験はどうだったんですか?

松本

第2志望には受かりましたが、残念ながら第1志望はダメでした。こちらとしては、毎年のことなので結果は分かり切っているし、お代をいただいて受験合格のためにやれることをやるのが仕事なのでね。でも、本人にとっては1回きりのことで、青春ど真ん中ですからね。そこはジレンマです。

勉強の成果が出るまでには“熟成”が必要

小口

文化祭が終わってからは、きっちり切り替えとまではいかなかったんですが……。

松本

そうですね。受験のための勉強が遅れだしてから、正直このままだと終わらないと見えてきたので、それまでの「まつがく予備校受験コース」の勉強はやめて、方向転換しました。「まつがく予備校受験コース」は共通テストと二次試験の両方に目配りした内容なんですが、共通テスト対策に一気に切り替えました。共通テストでダメだと次に行けないので。

小口

そうでしたね。

松本

共通テストの過去問を何年分もやっていくんですけど、小口くんの点数の上がりがなかなかすごかったんですよ。9月の模試では485点くらいだったのが、11月には580点以上で100点以上アップしていましたから。「このまま1月までいけばもう100点上積みできるかもしれない。そうしたら余裕だな」と。まあ、そんなにうまくいくかどうかはその時点では分かりませんが、がんばりはすごかったですよ。

小口

ありがとうございます。

松本

ただ、これも1学期からのがんばり、もっと言えばその前からの勉強の継続があっての話だと思っています。まったく何もしていないところからでは無理ですから。勉強は結果が出るまで3ヵ月から半年くらい“熟成”が必要なんですよ。勉強でインプットしたことが入試にそのまま出るわけではなくて、少しずらしていたり複数の要素の組み合わせだったりして出題されます。インプットした時点ではいわば“点”に過ぎない知識が、さまざまなパターンの問題を解いていくことでつながっていく。そうやって自由自在に出し入れできるようになるには、時間が必要なんです。

小口

中3で急に伸びたように感じたのも、そういうことだったのかもしれません。

松本

小口くんは真面目で人の言うことを受け入れるタイプなので、いろんな人がいろんなことを言うと混乱してしまうと思ったんですね。だから、任せるところは任せようと、いろいろ言わなかったんです。課題を渡して終わり、という感じで。

小口

「放置されてるのかな?」と思ったことはありました(笑)。

真面目さと集中力が実を結ぶ

公募推薦のための準備

小口

最終的な志望大学は、初夏の頃には決めましたね。

松本

模試はほぼ毎月のようにやるので、6~7月の時点で「(第一志望は)厳しいかもね」という話が出ていたよね。

小口

第1志望の新潟大、第2志望の群馬大の両方からパンフレットを取り寄せたり、ホームページを見たりしていました。あと、オープンキャンパスの申し込みも。コロナで中止になってしまいましたが。
そうやって調べている中で、群馬大の斎藤隆泰准教授の研究に興味を持ちました。粒子法を用いた流体シミュレーションの実験をやっていて、津波などで橋が被害を受けた時にいち早く復旧する方法や、そもそも災害から守る方法などを研究しているんです。

松本

具体的な研究室への興味と、2次試験で数Ⅲがいらないこともあって、群馬大を第1志望に切り替えたんだよね。そして、一般入試ではなく総合型選抜の公募型、いわゆる公募推薦で受験することになった。

小口

自分の場合、高1の頃からずっと推薦で行けたらいいなという思いはありました。担任も推薦に積極的な先生だったこともあって、公募推薦にチャレンジしました。同級生でも、公募推薦にトライしている人はけっこういましたね。

松本

今は、国公立の総合型選抜がかなり増えました。大学にもよりますけど、教科テストはなくて、評定と面接、口頭試問などで決まります。受験に対する考え方も、11月に総合型選抜を受けてダメだったら共通テストを経て前期試験、という流れに変わっています。国公立を受験する人の多くは総合型選抜を受けますよね。総合型選抜は私立を含めれば5割を占めますし、国公立だけでも目標3割で現状2割以上は公募でとっていますから。

小口

公募推薦を選んだんですけど、学校では面接の練習はなくて。

松本

面接の練習は、私立高校はやってくれるところが多いですけど、公立の高校はほぼないです。やっても1回くらいかな。

小口

それで、まつがくで面接と口頭試問の練習をやりました。

松本

面接はね、小口くんは最初からうまくできていました。逆に、口頭試問が最初はまったくできなくて。

小口

群馬大の口頭試問は物理・数学・英語の3教科で、紙で出された問題に口頭で答えるというものです。たとえば英語なら3問くらい。「長文を音読して意味を和訳しなさい」とか。数学だったら「5問中3問選択して解き方を説明しなさい」。実際に計算する問題も出ました。物理は事象の説明ですね。

松本

紙に書いて回答ならば解ける問題も、口頭だと勝手が違うんですよ。

小口

メモをとることもできません。

松本

たとえば計算の過程を全部説明するとなると、言葉が出てこないんですよ。計算はみんなあまり考えずにやるじゃないですか。だから、その過程を全部言語化するのは意外と難しいんですよね。公式なんかも結論は覚えていますけど、途中の部分はなぜこうなっているかがよく分かっていない。小口くんに一発目に聞いて止まってしまったのは、ドップラー効果の説明だったよね。

小口

そうでしたね。

松本

口頭試問は、何回も繰り返しやりました。過去問も入手できましたけど、本番では何が出題されるかはまったくわからない。それに、普通のテストと違って正解がはっきりしない。だから、当たるも八卦当たらぬも八卦じゃないですけど、こちらも悩みながらいろんな問題を投げていました。とにかくしゃべれないと話にならないので。特に数学と物理が怖かったですね。小口くんは、物理で得意分野と不得意分野がはっきりしていたから。

小口

自分、力学は得意だったんですよ。だけど、電気と波が不得意で……。力学は日常生活の中で具体例が思い浮かぶから分かりやすいんです。でも電気は目に見えない。自分的には、何をやっているのかさっぱり分からなかったです。

松本

物理はそうなりがちなんだよね。中には全般的に得意という人もいますけど、だいたいは得手不得手が出てきます。ネックになるのは、小口くんも苦戦していた電気と波ですね。
電気だとコンデンサー。蓄電池みたいなものなんですが、マイナスからマイナス、ゼロからマイナスといった変わった動き方をするので、そこでつまづきます。波は音波などです。波には縦波と横波があって、縦波はみんな分かるんですけど、横波はイメージができない。あと、授業やテストだと2次元で表現されるという点も理解を難しくしています。実際の波の動きは3次元ですから。そこに時間も要素として加わると、さらに混乱してしまう。自分の常識が使えない世界の話なので、常識を一度捨てないと理解できないんですよ。

小口

口頭試問の練習は10回以上やりましたよね。

松本

1対1で、1回1時間半とか2時間近くやったこともあったよね。回答も、どこを修正すべきなのかで悩みました。僕個人の考えではダメで、受験本番で出てくる群馬大の教授になりきって回答をつくるというのが、とても難しかったです。相手は物理の専門家ですから、本当なら専門的なレベルで回答できるのがベストですよね。でも、受験生にそこまで求めるとは考えられない。かといって、「これじゃ話にならない」と思われてもダメ。その見極めですね。

小口

群馬大の口頭試問は本格的ですよね。

松本

今だから言えるけど、最初何もしゃべれない状態だった小口くんを、どこまで高めればいいのか悩んでいました。もう10月で時期が時期なんで、あんまりダメ出ししてやる気を削ぐのもよくないし、かと言って「いいねいいね」で自信だけ高めるのもダメだし。口頭試問をどのレベルで仕上げていくべきか、毎回悩んでいましたね。そんなわけで、僕の中では口頭試問がいちばん大変でした。

小口

先生、そんなに悩んでいたんですね。

松本

本当に、よくついてきてくれましたよ。物理もだいぶちゃんと答えられるようになったし、完全に外した回答をすることもなくなりましたから。

小口

この時期は毎日寝る前の30分間、問題集の説明文を読むようにしていました。たとえば物理の事象だったら、「今日は波をやろう」という感じで、どこかは絶対覚えるつもりでやっていました。

松本

やっぱりこつこつやっていたんだね。僕はとにかく、波と電気が口頭試問で出ないことを祈るばかりでしたよ(笑)。

いざ本番、頭の中が真っ白に……!?

小口

それが、波は実際に出題されたんですよ。そもそも、入室した瞬間から頭の中が真っ白になってしまって。何の問題が出たかは覚えているけど、自分が何を答えたかは覚えていないんです。終わった時は「やってしまった……」と思いました。

松本

それを聞いて「終わったな……」と思いました。1月の共通テストに向けて切り替えようと。

小口

試験は11月17日で合格発表は12月6日と、半月開いていました。公募推薦の試験から帰ってきてすぐ、共通テストの勉強に切り替えました。それはもう、はかどりましたね(笑)。

松本

集中度が一気に変わったよね。目に見えて変わりました。

99%無理だと思っていた

松本

それが公募推薦、合格していたんだよね。

小口

脱力しました。発表の当日は10時頃に結果が出ていたんですけど、ひとりで見る勇気がなくて。学校で見て落ちていたら、家に帰るしかないじゃないですか。だから学校はふだん通り行って、帰宅した段階で見ようと。

松本

僕は小口くんから電話が来るまで発表は見てなかったです。落ちたもんだと思っていましたから(笑)。電話が来た時も、「不合格を律儀に報告しなくていいよ」と思いながら電話に出たんですよ。合格したというから反射的に「嘘をつくな」と思いました。ときどきいるんですよ。「落ちました」と言うので必死になぐさめたら「嘘です。合格しました」とだます生徒が。だから、「優しくしてくれてるんだな」と思いながら、疑って話を聞いていました。そうしたら、本当に合格したというのでびっくりしましたよ。なにしろ、頭の中が真っ白になって何をしゃべったか覚えていない状態でしたから、99%無理だと思っていたのでね。倍率はどれくらいだったんだっけ?

小口

1.8~2倍くらいでした。

松本

じゃあ、ばっちり答えられたってことだね。親御さんも喜んだでしょう。

小口

はい。みんな落ちたと思っていたので、喜んでくれました。まつがくに通うことは最初からかなり応援してくれていて。でも、受験については勉強しなさいとか口うるさく言われることはありませんでした。見守ってくれて、心の癒しというか支えになってくれました。

松本

小口くんは真面目で、言われたことややらなきゃいけないことをこつこつやれるタイプなんですよ。地道にやっていくので必ずどこかで結果が出るんです。あと集中力もすごい。共通テストの過去問は9教科全部やると6~7時間かかります。小口くんは、それができちゃうんですよ。そのへんの努力が最後、いろんなところにつながってきたんだと思います。

小口

苦手な勉強もあったんですけど、「やらなかったらたぶん落ちるな」と自分に言い聞かせて、やるようにしていました。

松本

4月からはひとり暮らしだね。

小口

1年は前橋で、2年からは桐生です。1月には借りる部屋も決めようと思っています。今のところは斎藤准教授の研究室に行きたいと思っていますけど、もっと違うことをやりたくなる可能性もあるかもしれないですね。

松本

本当に合格してよかった。おめでとう。

小口

ありがとうございます。こんなに嬉しかったことはないです。